■現状はどうなっている?
35歳までの年齢引き上げがアナウンスされているオーストラリアのワーキングホリデー。当初、バックパッカー税(ワーホリ税)の導入に合わせて年齢の引き上げとビザ申請手数料の引き下げも実施されると期待されていたものの、実際には会期末ギリギリまで引き伸ばされた税率の見直しを巡る与野党の攻防もあり、現在の時点では15%の税率でバックパッカー税の導入のみが始まった状態です。
■オーストラリアが年齢引き上げを検討する本当の理由
今回の対象年齢の引き上げが何故、検討されることになったのかを理解する必要があります。
晩婚化の影響もあって、「ギリホリ」とも呼ばれる30歳の年齢制限ギリギリでのビザ取得の多い日本。そのため、日本は35歳までの年齢引き上げでもっとも恩恵を受ける国の一つと言えます。ただ、実はオーストラリア政府はこのようなニーズに応えることを主目的に善意で年齢の引き上げを検討しているわけではありません。
オーストラリア側にも事情があります。それは地方での深刻な労働力不足。ワーキングホリデー制度は表向きには「休暇目的の入国及び滞在期間中における旅行・滞在資金を補うための付随的な就労を認める制度」としていますが、実はオーストラリアの場合、人手不足に悩む地方での労働力不足を補う手段としてワーキングホリデーによる労働力を活用しています。今回の新税導入に伴い、こうした労働力が他国に流出してしまう懸念が大きかったことから、流出分を補う目的で対象者が拡大できる「年齢制限の引き上げ」が検討されているワケです。つまりオーストラリア側にも強い年齢引き上げのニーズが存在しているのです。
■実施されると日本に来るオーストラリア人の対象年齢も引き上げられるのか?
ワーキングホリデー制度は二国間協定であり、互恵協定です。たとえばビザの定員なども各国との間で相互に統一していたりしますね。そのため、常に「鏡」のように相互に同じ条件で実施されているものと思われがちですが、実はそうではありません。
今回のオーストラリアの検討している年齢引き上げは日本側の同意があることが条件となると思われますが、日本側でもオーストラリア人向けの年対象年齢が引き上げられるとは限りません。たとえば、オーストラリアには2回目のワーキングホリデーを認める「セカンド・ワーキングホリデー制度」がありますが、これはオーストラリア側が自国の都合で設定した一方的な制度で同様の制度は日本側にはありません。このように常に双方で同じ条件で制度が運用されているわけではないということです。
■年齢引き上げはいつから実施されるのか?
これは現段階で断定する事はできませんし、実際に実施されることも確定していません。ただ、オーストラリア大使館のページ上には『別途お知らせがあるまで、現在の申請年齢制限(18歳から30歳まで)に変更はありません。』と記されていることから、基本的には実施を前提としている、と考えられています。
過去にオーストラリアでは出入国に関する法律を主に年に2回、7月1日と1月1日にしばしば改正しています。そのほか、10月と4月の四半期ごとに小さな改正が実施されることもあります。今回も全ての法改正を1月1日付で行うと見ていた関係者が多かったのですが、11月末にまで引き伸ばされた税率決定の遅れで間に合わなかった、と見られています。
このことより現段階では新年度の始まる今年の7月1日の引き上げが有力視されますが、第3四半期の始めとなる4月1日という可能性も残されており、公式の発表が待たれます。