先週、発表されたオーストラリアのバックパッカー税。当初案より税率を引き下げての導入となりましたが、同時にワーキングホリデービザの35歳までの対象年齢の引き上げが発表され、大きな話題となりました。
サプライズ効果もあり、対象年齢拡大のニュースばかりがクローズアップされていますが、まずは今回の変更について冷静にその中身を検証してみましょう。
■対象年齢の35歳までの拡大は決定なのか?
何をいまさら?と思うかもしれませんが、今回の決定はあくまでも政府案の決定であり、議会を通過して初めて実現するものです。そのため、「実施予定」であり、まだ「実施決定」の段階には進んでいません。
また、仮に実施されても日本からのワーキングホリデーが対象に含まれるのか、実のところハッキリしていません。事実、ニュージーランドではカナダなど一部の国を対象に35歳までの対象年齢引き上げを既に実施しているのですが、この中に日本は含まれていません。
こうしたことから、仮に実施が決定された場合であっても、いつから実施され、その対象に日本が含まれるのか、この点はこれからの発表を注視していかなければいけません。一方でオーストラリアのワーキングホリデーについては2013年(258,248人)をピークにビザ発給数が減少傾向になっており、国内の労働力確保を目的に、新税の導入に合わせて対象年齢の全面的な引き上げに踏み切る事も十分に予想されます。
■バックパッカー税(ワーホリ税)の税率19%の意味は?
当初、32.5%という税率が予定されていたバックパッカー税。結局、19%で決着となりそうですがこの19%という数字の出処についてはあまり報道されていません。実はこの数字、オーストラリアの所得税の最低税率なのです。
現状、オーストラリアの居住者に対しての所得税率は18,200ドルまで無税、これ以降、37,000ドルまでが19%、さらにこれ以降80,000ドルまでは32.5%などという累進課税となっています。
(参考データ:オーストラリアタックスオフィス)
バックパッカー税については当初、いきなり37,000ドル以上の所得に対して課税される32.5%という高い税率を課税する計画でしたが、人手不足を懸念する農業団体などの反対もあり、最低税率の19%からの課税に落ち着きました。
ただし、オーストラリア居住者にある18,200ドルまでの非課税枠が適用されないため、ワーキングホリデーメーカーにとっては増税となることには変わりありません。
■予想されるインパクトは?
オーストラリア政府側の見立てでは、今回のバックパッカー税の導入により従来得られなかった税収が確保できる上、地方での若年者の失業率(参考データ:ABCの記事)改善が期待できるとしての導入だったようです。一方で、ワーキングホリデービザの発給数が減少している中、新税に導入よりニュージーランドやカナダやといった他の国に「労働力」が移ってしまう懸念もあり、このインパクトを和らげる措置として対象年齢の引き上げという「奇策」を打つ理由となったようです。
日本では「ギリホリ(対象年齢ギリギリでワーホリに行く、という意味)」などという言葉もあるほどに、年齢制限の上限ギリギリになってのワーキングホリデー制度の利用が目立ちます。これは20歳台前半での渡航の多い他国とは異なる傾向であり、今回の年齢制限の引き上げが実施された場合、最も恩恵を受ける国の1つとなることが予想されます。
また唯一、31歳以上でもビザ申請できる国となることで、この年齢層でのワーキングホリデー希望者を総取りすることにもなり、日本におけるオーストラリアのワーキングホリデーの位置づけを大きく変化させる可能性を秘めているとも言えるでしょう。