デンマークの治安は他の欧米諸国と比べて比較的良い方だと言われており、毎日のように殺人事件をニュースで見るアメリカや日本と違って大きな事件が起こることは少なく、実際に私自身も怖い思いをしたことは幸いまだありません。
故に衝撃的でセンセーショナルな事件がデンマーク国内で起こることは滅多にないのですが、それでも去年、一件だけとても衝撃的な事件が起こりました。
それは2012年の7月のことでした。タブロイド新聞の見出しが『若い男性トラに食べられる!』とあったのです。
私はてっきり、たまに聞くインド方面の野生のトラの事件か、大きめの動物園で飼育員が襲われて亡くなってしまったのかと思いました。タブロイド紙の見出しはいつもセンセーショナルで実際に記事を読むと誇張されていることも多く、当てにならないと思っていたのですが、読み進めると、なんとその事件が起こったのは自宅からほど近いコペンハーゲン動物園というではありませんか。
そこは何度も行ったことはある場所なので、それを知った時動揺しました。記事を読んでもあまりに非現実的で、実感を伴わなかったことを覚えています。
被害にあったのは21歳の若い外国人の男性。朝一に来た飼育員によって、彼がトラの飼育スペースの中で死んでいるのが見つかったのです。
でも一体どういう状況で?!朝まで誰も気づかなかったということは開園中に起こった事故ではなさそうだし、前日の閉園時も変わった様子はなかったと言います。
謎めいた状況にこの事件はいつにも増してセンセーショナルに取り上げられました。
コペンハーゲン動物園は、出来るだけ自然の状態に近い環境に動物たちを置き、ストレスをかけないようにしており、猛獣のトラやライオンも檻ではなく、柵の中で放し飼いにされています。
もちろん柵は高く、水も張られていますが、警察によれば男性は自力で柵を超えて自らトラのエリアに侵入したのだろうと言われています。ふざけて男性が柵を超え、縄張り意識を持ったトラに運悪く殺されてしまったのだろうという見解でした。
一人で夜まで園内に身を隠して、こっそりトラのエリアに入るという不可解な行動。酔っぱらっていたのかもしれませんが、だとしてもたった一人でこんな自殺まがいなことをするでしょうか。もしかしたらそれを目撃していた人間がいたのかもしれません。
中には殺人事件では?と疑う声もあったようですが、状況から下された最終的な結論は、結局は男性の悪ふざけが過ぎたのだろうということに収まりました…。真相は闇の中です。
被害者のプライバシー保護の観点から21歳の外国人男性であるという事実以外は一切表沙汰にはならず、事故ということで数日で収まりを見せたこの事件ですが、コペンハーゲンでも有名な観光名所の動物園で起こった奇妙な事件ということもあり、他の事件より異様なインパクトを残したことは事実です。
ruru@デンマーク