イースター(Velykos)は、クリスチャンの多いリトアニアで大きなイベントのひとつです。スーパーに行けばヨーロッパで広く見かけるような、いわゆる「黄色や緑の商品」が目を惹きます。
一方で本来のイースターでは、丁寧な手仕事による飾りと手料理をこしらえ、家庭や町を素朴なあたたかさで包みます。ここでは、リトアニアのイースターにまつわる手仕事にフォーカスし、文化と習慣を覗いてみましょう。

2月、冬の終わりを告げるUžgavėnės(イースターの7週間前に祝うお祭り)が行なわれたあと、人々はイースターの始まりであるパーム・サンデーまでに、Verba(Verbos)という飾りを準備します。独特で不思議な魅力を持つこのアイテム、例年は3月のカジューカス祭で売られるほか、民芸品を扱う雑貨店や市場といった場所で見ることができますよ。
Verbosのスタイルは地方によって多少異なるようですが、筆者の住むヴィリニュスでは、主にリトアニアで身近な植物(ジュニパー・野草やハーブに、ライ麦などの穀物類)を組みあわせ、スワッグもしくは箒のような形に仕立てます。中には30種もの植物を使用した豪華なものも。大きさにもバリエーションがあり、手軽な数十センチのサイズから、2メートルに及ぶ大作まであるというから驚きです。
このVerbos、今でこそ家々の窓際に飾ってあるのを見かけますが、本来は家族や恋人・ご近所さんの身体を叩くために使います。厄払いや健康・幸せを願う意味が込められているそう。ちょっと違いますが、イメージは日本でいう節分のような感じでしょうか。国や地域が離れていても、海を越えて似たような目的を持つ習慣があるって、興味深いですよね。

ところで、Verbosにまつわるリトアニア語に「Ne aš plaku, verba plaka!(あなたをぶったのは、わたしじゃなくてヴェルバだよ!)」という言いまわしがあります(要は”言い訳”ですね)。リトアニア人にとって、Verbosはそれほど身近な存在なのでしょう。

イースターといえば卵、と思う方もいらっしゃるかもしれません。リトアニアの伝統的なイースターエッグ(Margučiai)は、蜜蝋で繊細な模様が描かれ、たまねぎの皮やビーツの煮汁で染めるので、素朴な雰囲気が漂います。模様の多くは、植物にインスピレーションを受けた曲線や幾何学模様が多く、眺めていると不思議な安らぎに包まれます(わたしだけ?)。
この卵を使った遊びも存在します。お互いの卵の殻で軽く叩きあい、割れた方が負け。勝者は敗者の卵をもらうことができるというものです。集めた卵の数が多いほど強いことになります。でも筆者なら「せっかくキレイな絵が描いてあるのに、割るなんてもったいない!」と遠慮してしまいそうです・笑。

最後にすこしだけ、食べ物の話を。従来イースターのお祝いで振舞われる食事には、ライ麦パンやゆで卵のほか、チーズ・ベーコンにハムなどなど。Kugelisという、ポテトグラタンのような料理もメジャーです。デザートも豪華で、ポピーシード・蜂蜜をたっぷり使ったスイーツや、Bobaと呼ばれるドライフルーツ入りパンを用意します。
リトアニアの4月はまだまだ寒く、ほとんど野菜が育たないため、かつて農民の多かったリトアニアで穀物や乳製品・肉類をふんだんに使用した料理は、当時のご馳走だったのでしょう。ここにも暮らしの知恵が垣間見えますね。

この話を書いている最中、ふと部屋の窓から外を眺めたら、ちょうど大きなVerbosを抱えて歩くおじいさんの姿が目に入りました。イースター期間も容赦なく厳格な行動規制が課されたリトアニアですが、誰もが来たる春を楽しみにしていることは間違いありません。

ライター:のり@リトアニア
自然と手仕事を愛する人。”sumiyas”という屋号でライター、草木染、編み物などをやっています。
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