「ワーキングホリデー」といえば、その呼び名のとおり、働きながら海外生活をすることを思い浮かべると思います。
しかし台湾では、絵に描いたような「ワーホリ生活」を送るのは少し厳しい現実があります。
まず、台湾では外国人が仕事を見つけるのが難しいということ。
働き口が多いのはやはり飲食店の店員ですが、注文を聞き取ったり、お客様とのやりとりができるだけの中国語能力が要求されます。
中国語があまりできない日本人が働けるとなると、日本料理屋か、あるいは日本人客(観光客やビジネスマン)相手の店が考えられます。また、日本人であるという条件を活かした仕事だと、日本語の家庭教師や塾講師などがあります。
ただ、飲食店の店員はあまり給与が高くありませんし、日本語教師は、基本的には授業をした分だけしか給料にならないため、生徒が少なければ稼げません。
台湾では、もう20年近くも労働者の給料水準は横ばいで、深刻な社会問題となっています。その一方で、物価は上がっており、特に不動産価格は年々高騰しているので、家賃が暮らしを圧迫し、庶民は不満を募らせています。そのため、台北のような都心部だと、家賃の高騰は顕著で、驚くほど築年数が旧いアパートでもけっこうな価格です。
家賃が高くなると、家の中で余らせている部屋も少なくなるのか、外国人ホームステイを受け入れる家庭も、以前と比べて少なくなりました。
そんな状況ですので、アルバイトの時給もしれたものです。一般的な時給は100〜150元(日本円で500円前後)。8時間で4,000円だとして、月曜から金曜まで働いて月8万円くらいですね。
家賃はといえば、日本的な水準できれいさや便利さを求めるとなると、1ルームで10,000〜15,000元(4〜6万円)が相場でしょう。
「雅房」というシェアハウス形式の住居(トイレやシャワー共同)なら、もっと家賃を抑えることはできますが、かなり汚いところが多いので、受け入れられない人も多いと思います。
そうなると、1ヶ月のバイト収入の過半は家賃で消えてしまい、更に食費等々を差し引くと蓄えはほとんど残らないことになります。
これならば、台湾でのアルバイト収入を当てにせず、日本でワーホリ資金を貯めてから来たほうがいい、という考え方にもなりますね。
あるいは、日本から台湾進出している企業などが、日本人の人材を募集していることがあります。
そういったところだと、そこそこ給与がよくなりますが、上司や同僚が日本人だったりすると、職場環境や勤務スタイルも、日本にいるのと変わらなかったりすることも。せっかく台湾に来たのに、現地人の同僚が少なかったり、日本語が通じる環境だったりだと、中国語も身に付かないし、「海外体験」という点では意義が乏しいかもしれません。
アルバイトを通じて、言葉や文化を学べたり、現地の人と接することができればいいのですが、なかなか理想どおりにはなりません。
「海外で働く」ことが主目的であれば、ワーホリビザを就労ビザのように考えて、月曜から金曜まで毎日働くのもいいでしょう。しかし、ワーホリは本来「ホリデー」なわけです。
ビザを発行している台北駐日代表処のWEBにある「台湾へのワーキング・ホリデー査証に関するQ&A」にもこう書かれています(2016年7月現在)。
ワーホリで認められているのは、《休暇を過ごす活動とその間の滞在費を補うための就労》であること。そして、ワーホリのビザはあくまで《見学旅行を目的とした査証》であること。
アルバイトで疲弊するくらいであれば、一年間は休暇であると考えて、台湾各地を巡って過ごすほうが有意義かもしれません。
取材協力:台湾トランス(台湾留学・ワーホリサポート)